過去の公演紹介
過去公演一覧
■Vol.1 L_ve
「ただひたすら自分達がやりたい表現を」
という、とても実験的目的をもって創った作品。「観客による評価」ということを一切考えず、ただ自分達のやってみたいことだけをやってみるという実験。実験である以上、チケット代も無料にし、終演後お客様と座談会を開いて、感想を聞いた。
かなりチャレンジではあったが、表現者としての原点を探すという意味においても、その後の活動においても、大変有意義な公演であった。(この作品がこれまでの作品中で前衛の極であり、その後の創作活動においての目安となった。)
内容は、ある作家志望の青年が見る幻想。身体表現が多く、ストーリーとしての説明はあまり無い。彼が感じたり、見たりした様々な情景、感情、記憶がコラージュされていく。
俳優が人間だけではなく、モノ、概念まで演じるMOMENTSのスタイルは、この時点で確立されていた。
■Vol.2 L_ve 〜imaginaly time〜
「客が感覚的に分かる作品への挑戦」
前回公演L_veを、「お客様に観てもらう」ことを意識して、作り直す。前回のL_veのイメージはそのままに、今度はお客様の間口を広げていくことを狙った。キャストを入れ替え、再度ディスカッションしつつ、新しい作品として作り直した。
また、上演までのプロセスにも特徴があった。3ヶ月以上の稽古後、本番一ヶ月前にわざわざ劇場を借りて、無料でプレビュー公演をする。そのお客様の意見を元に、さらに一ヶ月間練り直し、やっと本番の舞台を迎えるという贅沢なプロセスを経て創った。
台詞による説明は少なく、アバンギャルドの要素が多いが、より多くのお客様の心に訴えかける、MOMENTSのアイデンティティというべき作品。
■Vol.3 幸福な王子
「子供から大人まで楽しめ、ちょっと考えさせられるエンターテイメント」
オスカーワイルドの名作「幸福な王子」を舞台化。原作が童話であることを生かし、通常の舞台とは手法を変え、客に語りかける場面を多用。
子供にも分かりやすく、尚且つ、客観的、現実的視点を盛り込み、大人の目線でも楽しめる作品。
さまざまなアイテムを、色々な比喩として使うスタイルもこの後のMOMENTSの特色となる。MOMENTSの試金石。
■Vol.4 お月さまへようこそ / 幸福な王子
前回好評だった「幸福な王子」の再演と、アカデミー脚本賞も受賞した作家ジョン・パトリック・シャンリィのオムニバス劇「お月さまへようこそ」を上演。
MOMENTSでは珍しく既成の戯曲を、台詞は余りいじらずに舞台化した。
とはいっても、生の音楽、身体表現、アンサンブルによるパフォーマンスなどのMOMENTSらしさで、演劇ならではのロマン溢れる作品に。
また、原作にはないストーリーテラー役が幕間をつなげていく手法で、個性的な五本の短編に一貫したテーマ性を出し、観客にとってより見やすい作品になった。
■Vol.6 ヘ・ン・シ・ン
「ある朝、目覚めると自分が毒虫になっていた」というくだりで始まるカフカの名作「変身」。ポップな表現で、原作の持つ「難解」なイメージを払拭し、万人受けしやすい作品にした。
また、空間の広さをいかし、これまで以上に多種多様な身体表現を駆使することで、観客の感性を刺激する場面を多く取り入れる。
衣装、装置などの演出面でも、これまでで最もスタイリッシュ「どこか不条理で、無常であるが、ポップな舞台」。
■Vol.7 ↓杜子春↑
芥川龍之介の「杜子春」をMOMENTS流にリメイク。日常雑貨を楽器として使い、杜子春の作品世界を「音やリズム」で比喩的に表現する。
生の音や歌声によるアプローチを活用し、よりライブフィーリング溢れる作品にした。
また、杜子春の舞台である「古代の洛陽」を、人種文化もミクスチャーな「現代都市」に解釈することで、御伽噺の背景に、「自己と他者の関係における葛藤」という現代性を盛り込んだ。
■Vol.8 マクベス −シアワセのレシピ−
MOMENTS初めての戯曲に挑戦。どこにでもいるごく普通の愛し合っている夫婦が、ちょっとした予言(現代でいうならば、雑誌やテレビなどの占い)を信じ、一線を越えて人を殺してしまう、という視点でマクベスを解釈。
「魔女の予言に振り回され、悲劇の死を迎えるマクベス」というシェイクスピアのドラマティックな世界と、「様々な情報に振り回されている現代人」というアクチュアルな問題意識との融合に成功。
多色に彩った膨大な新聞紙での様々な表現が、魔女や情報の象徴として作品コンセプトを明確化し、観客の絶賛を受ける。
■Vol.9 桜ノ森ノ満開ノ下
坂口安吾の「桜の森の満開の下」をMOMENTS流にリメイク。段ボール60個と脚立2台のみを使用し、舞台上に想像の桜の森や、桜や人の命が散っていく様を表現。
神話のような耽美な世界をシンプルな道具と役者の身体・表現力のみで、豊かに描く。エンディングでは現代の風景を挿入し、「全ては無常に消えていく」という冷酷な現実を受け止める力強さを表現した。
今までの作品よりも、パフォーマンス色が強く、MOMENTSの新たな一歩となった作品である。
■Vol.10 終わりよければすべてよし
「本当のハッピーエンドとは?」
シェイクスピアの中でも、かなり上演機会の少ない戯曲「終わりよければすべてよし」をMOMENTS流に。
「終わり(エンディング)」は「ゴール」であり、人生は「一つのレース(競争)だ」と解釈した演出は、作品に現代性とダイナミズムを生み出した。その解釈に基づき、小道具はゴールテープを模したゴム紐を使い、空間を様々に変容させた。
舞台前面に芝居中ずっと、ゴールテープが張られているという大胆な演出や、主人公が泣きながらそのゴールを切る衝撃的なエンディングは、喜劇と悲劇の境界線を壊し、多くの観客を驚愕させた。
■Vol.11 雪のひとひら
「何故、生まれてきたのか?」
ポールギャリコの寓話「雪のひとひら」を舞台化。雲の中で生まれた雪の女の子「雪のひとひら」の誕生から消滅までを、美しく、躍動的に描いた作品。
小道具にはスケッチブックを使い、プレーンな世界観を作り出すことに成功。シーン展開に合わせ、白から彩色のページへと移り変わるスケッチブックは、雪、ハンカチ、炎のような具象から、夢、試練、心といった抽象まで観客にイメージさせた。
ラストの主人公が一生を振り返る場面では、そのスケッチブックのページを最大限に生かした演出によって、多くの観客が涙した。