だい
無事初日が空けた。

備忘録として。

15日、小屋入りして、日本チームの場当たり、照明や音響をメインに調整。4劇団合同でのフェスティバルなので、あまり我儘は言えない。しかし、マカオサイドは非常に協力的だ。

16日、マカオ&マレーシアチームが劇場で場当たりするので、日本側は別なところで稽古。
主に字幕担当の子に、合わせて稽古。字幕はbowbowとtengtengの出来る女子が二人。しかし、当然日本語がわからない。だから、長いセリフなどは、どこで画面を切り替えるかのきっかけがわからないので、何度も調整。音声を録音したりして、とても一生懸命やってくれている。マカオの人は総じて、優しい。マカオ側のスタッフは皆、こちらの要求には最大限答えてくれようとしている。良いショウにするべく、頑張ろうと思う。
とはいえ、マカオ入りして数日、みんな楽しんではいるが、疲れもたまりだしたようで、体調を崩すモノもでている。

そして、17日。いよいよ初日。午前中から最終調整に入るが、照明や音響で不具合が。音響は、基本設定が変わったのかもしれないが、15日に調整したボリュームだと音量が小さく聞こえる。再度、頭から全音響の調整しなおし。照明は、「マニュアル操作」でオペをするように場当たりをしたが、「コンピューター操作」へと急遽変更になる。なので、こちらもキューをプログラミングに打ち込まなくてはならない。

加えて、字幕がみえずらい。これは場当たり時にも懸念していたことだが、改善できていない。照明が入ると、字幕が薄くなってしまう。Bowbow とTengtengが調整してくれ、文字の大きさをかなり改善したが、まだ見ずらいのは事実。

しかし、テクニカルに拘りすぎると、先に進めない。我々の持ち時間は17時まで。照明宇野ちゃん、音響ゆうちゃんは最大限に頑張っている。片言英語でこちらの要求を伝えながらなので、時間も倍はかかるが、粘り強く。俳優も慣れない環境の中、状況に対応して粛々と進めてくれる。僕はテンパっているが、みんなが頑張ってくれている。

しかし、時間は刻々とすぎる。
16時にはランスルーリハを開始しないとならない。
何とか準備して、ランスルー開始。
17時すぎに終了。少し問題はあるが、最善はつくした。

17時にはマレーシアチームも合流し、カーテンコールの打ち合わせ。
今日の初日は「20時に「マレーシア演目」開演し、その後15分の休憩を入れ、日本の演目」というスタイル。なので、合同カーテンコールは、後に上演する日本の公演後になる。マレーシアの劇団とプロデュースの「ディッキー」と相談しつつ、段取りを組む。

開場まで残り一時間程度、あとは開演を待つしかない。と思っていると、マカオのスタッフが作業を始めた。どうやら急きょ、別なプロジェクターが届いたようだ。こちらの要求に対応し、より鮮明に映る光量の高い機種を用意してくれた。交換すると、文字ははっきりと映写され、字幕問題は解消した。助かった。マカオチームの粘りに感謝である。

そして開演前、全員そろってお祈りの時間。「公演の無事成功を祈願してのお祈り」だ。「日本式を見せてくれ。」というので、MOMENTS流の「無事祈願」を全員で行う。「では、マレーシアスタイルもやってくれ!」となり、今度はマレーシア式の祈願を。国際交流のだいご味だ。

準備万端が整い、開場。我々もマレーシアの公演を観劇したいが、ウォーミングアップがあるため、次の機会に回すことに。彼らにそれを伝えると、「僕たちは先に終わるから、日本の公演を見せてもらうよ」とのこと。マレーシアのチームもとても人間的に優しく、温かい。ありがたいことだ。「Break a leg!」(「良いショウになるように。」という意味。)と健闘を誓う。

満席の中、1時間後、マレーシアの演目が終わる。開演準備し、マカオ版「楢山節考」開演だ。MOMENTSの日本キャストでの公演としては、初の海外公演である。例のごとくMOMENTSスタイルの佐川前説から始める。通訳のバー二スに手伝ってもらう。バーニスは3年前のマカオフリンジ「幸福な王子」の時から、お世話になっている。4年にもなると、人の輪がつながっている。

前説ではリアクションも上々で、笑いのある客席。芝居も最初はリラックスしてみていたようだが、徐々にシリアスな雰囲気へと。息を飲んでみているのが、演技していてもはっきりと伝わる。そして、終幕。涙をぬぐう人も多くいた。万雷の拍手。終演後、マレーシアチームと日本チームとで、手をつないで合同のカーテンコール。袖に佩けたあと、マレーシアチームのメンバーが「very good show!!!」とハグしてきてくれた。いつしか袖中の暗い場所で、日本チームとマレーシアチーム、全員がハグしあいだす。この光景を目にし、「来てよかった」と心から感動した。演劇のマジックである。体験を共有した人同士はあっという間に繋がれるのだ。言葉を超えて、何かを共有することで、価値観が広がる。日本メンバーにこの体験をさせることができて、本当に良かった。

今日の観客には、マカオフリンジのプロデューサー、ビリーさんもいた。彼もいたく感動したようだ。1月のマカオフリンジでMOMENTSの上演する演目の話をする。上演演目は、昨年MOMENTSが上演した「生者のための葬儀」だ。作家はマカオのフィリップ。ビリーさんいわく、「マカオの作品を日本で上演したのは、あなたが最初だ。」とのこと。

5年前にたまたまMOMENTSの公演をふらっと見に来たイレーン。彼女に「是非、マカオフリンジでやって!」と誘われ、4年前にマカオフリンジを自費で見学し、ビリーさんを紹介され、3年前、マカオフリンジに「幸福な王子」で参加。その時の照明スタッフだったディッキーに今回のフェスに招聘された。フィリップとも「幸福な王子」の時、以来のつながりだ。

今回のフェスでも色々な人と繋がっている。さて、この先、何ができるのか?輪を広げていこう!